固有の業務ノウハウがたくさん盛り込まれているオフコンの機能と業務の仕方をそのままに、
日々、多角的な視点から業務運営を行うリアルタイム経営を実現。

オフコンのベンダーから、今後は保守ができませんという一方的に宣告された従業員70名ほどの冷凍食肉の輸入卸会社。

商社ならではの、きめ細かい顧客対応が求められる業務運営の知恵をたくさん盛り込んだ業務システムがいつ使えなくなるか分からない。

業務運営の知恵をそのままに、新システムに移行しようとすると法外な投資が必要だと告げられる。

八方ふさがり中、従来業務はほとんど変えずに、オフコンに盛り込まれた業務運営のノウハウをそのまま引き継ぐためにサピエンスを選択。そればかりか、日次締めで最新の在庫、売れ筋、売上と粗利、資金繰りをリアルタイムで把握する経営スタイルを確立しました。

それも当初覚悟した予算額の3分の1ほどで。

》 タイトル一覧 《




オフコンを使い続けて

オフコンのメーカーにとってはとっくにお荷物となっているからか。オフコンを使い続けなければ業務が回らないという足元を見透かされているからなのか。保守費用は昔のままだし、保守の度に高額な修理部品の金額を要求されることもある。


保守費用は仕方がないと諦めていたら、もう部品の調達は無理なので、契約は継続できませんと、オフコン・メーカーから一方的な宣告を受けることも。これでは、どこかが故障すればオフコンは使えなくなって業務は大混乱するし、最悪は一時的であれ業務が止まることにもなってしまいます。


その上、オフコン導入時に業務ソフトウェアを開発した技術者はもう社内には居ないとのこと。システム導入時から業務がこんなに変わっているのだから、ソフトウェアもそれに合わせて変えて欲しい。しかし、そんな昔の設計図は既になく、機能の解析には膨大な工数が必要だからと見積もりが多額になり諦めることに。お蔭で、オフコン導入当初からすれば拡大し変容した業務をこなすために、走り描きの多量のメモが溢れかえるままに。


インターネットを使ったオープンな時代なのに、出先からはオフコンの業務システムが使えない。お蔭で、商談で商品在庫や取引価格について突然問われると即答ができずに、一旦持ち帰って回答することもしばしば。電子商取引への対応も遅れがちになり、せっかくの商機を逃すことも。


それに、昔ながらの週単位の締めのため、商品在庫の不足が分かるのが遅い。商品の細かな分類での売れ筋や死に筋の販売動向を掴むことが、システム仕様の制限からできない。このリスク回避のために多めに商材を発注するために無くならない死蔵品の量もバカにならない。


週次の営業会議資料はデータをオフコンから抜き出してEXCELを使って作成している。しかし、商品分類が粗いために、きめ細かな営業政策には役に立っていないのが現実。営業としては日次で締めた最新のデータが欲しいが、土台無理な話。

タイトル一覧

オフコンにある固有の豊富な業務ノウハウを活かしたい

しかし、そうでありながらもオフコン上の業務ソフトウェアを作る過程では、会社固有の業務ノウハウをたくさん詰め込んでいるのも事実です。


扱う商品の特性に合わせた在庫推移を把握することで、適正在庫を確保できる仕組みがある。扱う商品の幅が広がったことで、オフコンの機能ではカバーできないケースが多発しているだけのこと。この機能が改善できれば、適正在庫を確保するノウハウをそのまま活かすことはできるはず。


商品在庫の荷姿は同一商品であっても販売先によって変えている。販売先と商品の組み合わせによって管理ができなければならないし、販売単価も契約条件に合わせて幾つもある。特に粗利は資金繰りに直結するので、販売単位にきめ細かく管理することになっている。こういうノウハウもオフコンの機能として組み込んである。


オフコンを捨てるのであれば、こういう独自のきめ細かなノウハウを新たな業務システムでも使いたい。そして、せっかくシステムを変えるのであれば、オープン化でいつでもどこからでも使えて、客先での商談で卸値が把握でき、在庫手配までして欲しい。そのためには、日次で締めた最新の在庫状況が分かることが必要になる。


事務所内を飛び交う多量の走り書きのメモが無くなり業務が効率化する分、その空いた時間を重要顧客への対応や新規顧客開拓へ振り向けることができる。きめ細かな商品分類に基づく販売動向が直ぐに見えれば、営業政策に役立つ。最新のIT技術を使えば、そんなことは当たり前にできることではないか。

タイトル一覧

輸入冷凍食肉の卸売会社が直面した課題

そのような状況にあった輸入冷凍食肉の卸販売を行う社員70名程の卸売会社がありました。輸入販売するだけでなく、独自の加工レシピを開発し、国内外の商品工場に委託生産した加工品をスーパー等の小売りや飲食店に卸してもいます。数十年使い続けた国産メーカーのオフコンには、この会社ならで業務ノウハウの多くが詰め込まれていました。

この会社の業務の概要を次の図で示します。

(企業の概要)



そんなオフコンの保守契約の継続が、交換部品の手当てが困難であることを理由に出来ない旨が一方的にベンダーから言い渡されました。そこで、そこの新システムの導入について相談しました。条件として、オフコンの業務ソフトウェアの機能を継承すること。オープン・システムとしていつでもどこからでも使えることを上げました。ベンダーからは、オフコンの機能を理解している社員が居ないことから、プログラムを解析することでしか機能を把握できないと告げられます。そのために掛かるおよその見積もりが出ましたが、その金額は驚くほどのものでした。


併せてパッケージ・ソフトウェアについても検討をしています。結果は中小の輸入食品業者向けに特化したソフトウェアの品揃えが少ないこと。しかも、オフコンの機能は、画面とデータベース、それに帳票から把握するしかありません。限られた情報から機能を推定し、それとパッケージ・ソフトウェアとの機能の差異を把握する作業の手間が相当掛かること。それでもこれらの機能をざっくり比較するだけでも、修正箇所は相当な数に上りそうなことが分かりました。


この会社が抱えているオフコンを利用することでの課題を下の図にまとめています。


(オフコン利用上の課題)


タイトル一覧

サピエンスで解決を目指す

そんな八方ふさがりにあった状況で、サピエンスを使ったITプロジェクトに関わっていた当社に相談がありました。サピエンスを使ってどうにかならないかということです。とはいっても、当時は大型案件であるサピエンス・プロジェクトの導入コンサルティングを行っていただけで、開発の経験はありません。しかも当社は零細も零細の会社。そこで、サピエンスの日本法人のトップに相談にしました。


結論は、このサピエンスの日本法人が開発を請け負うには予算規模が合わない。当社のような零細であれば単価が安いので、予算内でも結果を出せる。サピエンスについては長年付き合っていたので、私のキャリアであれば技術教育をしっかりしてあげれば対応できるということでした。その言葉を信じて、廣瀬が開発そのものを担当するという条件で案件を引き受けました。私は開発に専念しなければならないため、別途「こまくさネットサービス株式会社」の役員にITのコンサルタントお願いしました。また、サピエンスには帳票設計やEXCEL用のCSV出力機能はありませんので、そのための若手技術者も開発チームに参画しました。


この会社が目指す課題解決について下の図にまとめています。


(課題解決の方向)



サピエンスの開発では、オフコン機能の内部解析は行いません。画面とデータベース、それに帳票という表面的な機能を元に、その動きと同じようなものをゼロから作り上げていきます。もちろん、これらを眺めただけでは機能のすべてを把握できません。そこで、実際のオフコンを使った業務の流れを担当者から説明してもらいます。不明点を逐次確認し機能の60%くらいは理解できたと判断した時点で、サピエンスで実際に設計図を描いて動かします。その動きを担当者に確認してもらいながら、ダメ出しを繰り返してバージョン・アップをしていきました。


それと並行して、要求される機能をサピエンスで作るための技術ノウハウが私には欠けていることが次々と判明します。その度に、日本法人の担当者を訪問して教えを請いました。正直、この機能はサピエンスでは作れないのではないかと思ったことが幾度もありました。それを担当者に確認すると、すべてサピエンスで対応できることが分かりました。コンサルティングをしていて分かってつもりでいましたが、実際に開発で使ってみるとサピエンスの技術的な深さと広がりに驚くばかりでした。そうは言っても、がちがちにプログラミングされ、動きが相当に複雑で画面の表現が素晴らしく美しいソフトウェアは作れません。あくまで基幹となる業務システムを作るのがサピエンスです。

タイトル一覧

間抜けな対応でピンチに

それでは、サピエンスでの開発が順調に推移したかというと、そうではありません。当初は、オフコンの機能を素直にそのまま移行できれば良い。そして伝票としてのデータがスムーズに部門間を流れてペーパーレス化できればという程度の認識でした。しかし、各部門の担当者に試作品(プロトタイプ)で実際に動くものを見せると、ここはこうした方が良いという改善案がどんどん出されます。伺ってみると確かにその通りなので、せっかくの機会だからとそれらの機能改善もしました。また、私にとっては初めてのサピエンスでのモノ作りのため、サピエンスそのものへの無理解から動かない、動きが変だということも多発します。繰り返される機能改善と障害対応に相当に時間を取られることになりました。


そして、開発も真っ盛りという時期に、とんでもないことが分かります。
「会計の機能はどうなっているの」と担当役員から問われたことが切っ掛けでした。
「現在使っている会計パッケージソフトはそのまま使い続けるということなので、そちらに業務実績データをサピエンス側からそのまま渡すことになっています」と答えました。
「それは違うよ、会計ソフトでは月次にまとめた仕訳の元となる実績データの集計値から決算処理をしているだけ。債権債務関連の処理は全部オフコンでやっているはずだ」とのお言葉。
お願いしていたITのコンサルタントと一緒に一瞬で青ざめ、血の気が失せていく感覚を今でも生々しく覚えています。


まったくどうにもならないほど間抜けでした。しっかりオフコンの事前調査をしていればこんなバカなことは起こりません。幾人もの業務担当者からヒアリングし、画面やデータベースも調査していたはずなのに、会計はすっぽり抜けていました。理由は単純で、会計はこの役員の方が一手に引き受けていたこと。この方からのヒアリングは、現場で利用する機能がある程度動いてから確認程度にすれば良いと勝手に思い込んでいたためです。


私は会計関連のITコンサルティングはかなりの数をこなしています。会計の債権債務という言葉を聞けば、それがどんなに作るのが困難なのかを推察できます。経理の個々の処理自体は単純なのですが、それぞれにきめ細かな機能が要求されます。また作る機能のボリュームも相当なものになります。見せられたオフコンで作っている会計伝票や帳簿はそれを裏付けていました。結局開発工数が足りないということで、私は会計の機能作りに専念し、残りの業務の機能作りについては急遽一人応援を頼みました。結果として、私はこのサピエンス・システムの80%ほどの機能作りを担当しています。


また、開発工数が想定を超えたことのもう一つに、経営関連の機能があります。現場からの業務情報が充実する事実が明らかになると、経営者層からは様々な経営管理情報が見たいという要望が出されます。オフコンでは出来なくて諦めていたことが、これを切っ掛けにどんどん溢れ出てきます。これには追加予算と開発期間の延長を了解して頂き対応しました。

タイトル一覧

新システムへの移行

難局に幾度も遭遇しましたが、旧来のオフコンの機能をそのまま引き継ぎ、各段に機能を向上させた新システムが稼働しました。そのシステム移行の概況を次の図に示します。


(新システム移行の概要)



また、新システム導入の効果を企業経営の視点からまとめたものが下の図です。


(新システム移行の成果)



そして、新システムの機能の体系は下の図の通りです。


(新システムの機能体系)



参考までに、機能項目毎の画面の一部をメニュー画面から紹介します。


(メニュー画面)




(仕入と在庫の画面)




(販売の画面)




(会計の画面)




(経営管理の画面)


タイトル一覧

リアルタイム経営の実践

ここで紹介する事例で本質的な成果は、リアルタイムでの経営判断が行えることです。そのために、新システム導入に合わせて伝票は日締め処理を徹底しています。商社にとって最も大事な経営指標は、 「在庫」「粗利」それに「キャッシュフロー」です。


この会社が実践したリアルタイム経営の概要を下の図にまとめました。

(リアルタイム経営の概要)







この事例企業でのリアルタイム経営の実際を、「在庫」「粗利」「キャッシュフロー」のそれぞれについて次に紹介していきます。これは、伝票は必ず日締めでシステムに投入し、それが何時でもどこからでも直ぐに把握できる仕組みの実現です。新システムの価値は、単なるオフコンの業務ノウハウをそのまま移行するだけでなく、このリアルタイム経営を全社に浸透させたことにあります。なお、紹介する画面にある数値やデータは架空のものです。


最初に「在庫」ですが、商社であれば「倉庫間の移動」「販売先毎の商品振替」「部門成績を把握するための社内売買」の機能は必須です。これを同一の在庫ロットについて、複数回、頻繁に行われます。この一連の在庫の推移を簡単な操作で分からなければなりません。当然ながら在庫の倉庫間の移動と評価額についてもです。


この状況を次の一連の図で示します。

(在庫推移の概要)




(在庫状況と払出しの推移を把握)




(在庫移動の推移を把握)




(月末在庫の資産価値を把握)





次に
「粗利」ですが、この事例の商社では商材の利幅がかなり低い商売をしています。このため、全社ベースの日次の粗利と粗利率の動向をざっくりと捉えること。そこから、販売部門別、商材のカテゴリー別、そして顧客別の粗利動向の把握が必須です。部門別については、所属する担当者別の粗利動向まで把握しています。また、商材の単価の変動も売れ行きの変動が大きいため、これを特定の販売期間で把握することが求められます。


この状況を次の一連の図で示します。

(粗利獲得に貢献する要因を即時に把握)




(得意先別の粗利実績を把握)




(全社の粗利実績を把握)




(多角的視点から粗利実績を把握)




(商品別月次の粗利実績を把握)




(商品別販売期間の粗利実績を把握)





そして
「キャッシュフロー」ですが、仕入はかなり大きなボリュームで、販売はそれを小口化してこまめにというのが事例の商社の特性です。このため、多額の支払いを販売での小口の入金で賄えるのかを常に把握しておく必要があります。つまり、キャッシュフロー(資金)の循環を先々の予定として日別に把握しなければなりません。


この状況を次の一連の図で示します。

(キャッシュの循環と持ち高を即時に把握)




(予定/実績日毎にキャッシュフローを把握)




(キャッシュフローのバランスを把握)


タイトル一覧